俺が彼女に会えない理由
「冬弥くんてさ、なんで、そんなに優しいの?」

ある日、唐突にそう言われたのは、時が流れた小学校六年の雪降る日のことだった。

下校時、下駄箱の前で、上履きから外靴に履き替えながら尋ねてきた。その直前には、寒そうにした風花の手にホッカイロを握らせた。

俺は、なんて答えればいいのかわからなかった。それは、自分自身にさえ問うたことのないことだった。

「なんで、いつも優しいの?」

風花はまた尋ねてきた。

「別に、理由なんかないよ。優しくしたいからするんだ」

咄嗟の反応でそう返事した。

「ふうん。そうなんだぁ」

風花はそれだけ言うと、「今日もケイドロしてく?」と何事もなかったかのように歩き出し、雪の中でも懲りずに公園で走り回って遊んだ。

今にして思うと、風花があのとき何を聞きたかったのか、何を言いたかったのか、もっとよく考えればよかった。
恋愛にうとかった当時の俺は気にも留めなかった。

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