俺が彼女に会えない理由
風花のお母さんには、母親のように面倒を見てもらったこともある。

小学校六年の秋口だった。
夏から秋になる季節の変わり目に、俺は調子を崩した。

でも、頭が痛いとか、熱っぽいとか、食欲がないとか、そんなことはときどきあったことだから特に気に止めずにいた。

母はそんな俺の異変を気に留めなかったというよりは、気づいてさえいないようだった。
ただでさえ、仕事で疲れ切っている母に、風邪をひいたみたいだとは言い出せなかった。

そんなふうに過ごしていたら、ある日、午後から猛烈に気分が悪くなった。
吐き気もして机に座っているのが辛くなって、保健室に行ったら「熱があるから親に迎えに来てもらいなさい」と言われた。

先生が母の職場に連絡すると、どうしても仕事が抜けられず、夕方を過ぎないと迎えに行けないということらしかった。
どうしようかと困っていると、休み時間になって保健室に顔をのぞかせに来た風花が、「私のお母さんに来てもらおうよ」と提案してきた。

「いいの?」と尋ねると、「もちろん」と言うなり保健室から出て行った。

数分して戻って来ると、「お母さんが今から来るって」と言ってくれた。
どうやら、先生に相談して、先生が風花のお母さんに頼んでくれたようだった。
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