俺が彼女に会えない理由
「あら、こんなに豆がつぶれちゃって。歩くの辛いでしょう?」

風花のお母さんは、しゃがみこんで風花の足先を撫で、バンドエイドを貼った。

「お父さんが、おんぶするから。もう、二人とも帰っておいで」

「えー、やだよ。まだ遊びたい」

「もういい時間だから。ほら、乗りなさい」

お父さんがしゃがんで風花に背を向けると、しょんぼりした様子で背中に乗った。

そのやりとりを見ていて、心底、いい家族だなと思った。
風花が羨ましいと思ったし、家族愛に飢えていた少年心には寂しさも感じた。

そんな夏の思い出だ。
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