俺が彼女に会えない理由
風花が照れたように頬を赤らめた。
まるで、白肌にいちごの果汁をひとしずく垂らしたみたいに。

その顔、可愛すぎると思った。

久々に間近で見た風花に、クラスで一番背が低かった小学校の面影は微塵もなかった。

すらりと伸びた手足、艶やかに伸びた黒髪。

いつの間にか、すっかり成長していて色っぽさを感じ、せっかく久しぶりに話せたというのに、早々に会話を切り上げたくなった。

このまま話していたら、気持ちが見透かされてしまう気がして焦り、本当は一緒に家まで帰ろうと誘うつもりだったが、咄嗟に思いついた嘘を言った。

「またゆっくり話そうな。俺、本屋に寄ってくから」

「そっか。じゃあ、またね!」

「またな」

そうして、およそ三年ぶりの風花との会話は終わった。

ほんの数秒間の会話だったけれど、あの冬の日、成田駅の改札で言葉を交わしたことは今も鮮明に心に刻まれている。





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