俺が彼女に会えない理由
「バイトしたいんだ」

母が再婚して、経済的には楽になったけれど、自分の小遣いは自分で稼ぎたいし、大学は東京に出て、一人暮らしをしたい。
そのためには、貯金が必要なんだ。

そう話すと、理解してくれたようだった。

「なんのバイト?」

「空港の中の店で」

「なんの?」

「メンズアパレルショップの販売。第一ターミナルにある店」

「へー。空港かぁ。いいね!いつから?」

「来週から」

「そうなんだー。シフト、教えてね」

気付けば、緊張もなく、かつてのように普通に会話ができていた。

本能で、これは最大のチャンスだと思った。

風花が好きだから、自分のことも好きになってほしい、初めてそう懇願した。

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