俺が彼女に会えない理由
なんて可哀想な赤ちゃんだろう。
ビラを配っていた人たちは家族だろうか。

流れ行く車窓を見ながら、この赤ちゃんがどこかにいて、今も無事に生きていることを願った。

どうか、家族のもとに帰れるようにと。

新幹線の小さな車窓から流れ行く空を一瞥した。
星ひとつも見えない空を。

そのとき、ケータイが振動した。
目をやると香澄美からのメールだった。

《この前のことは、ごめんね。酔ったいきおいだから、気にしないでね。
また飲みにいこ!都合のいい日、教えてね~♪》

一度は返信しようとして、文章を打った。

が、最後まで書いたところですべてを消し、結局、返信しなかった。
できなかったというべきか。
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