俺が彼女に会えない理由
2003年。5月。

教室の窓から見える青葉に初夏の陽光が当たって、まるで陽光が青葉に「君が主役だよ」とスポットライトを浴びせているみたいだった。

窓辺に寄りかかりながら、「冬弥くんの誕生日、また、うちで祝おうよ!」と風花が提案してきた。

誕生日を二週間後にひかえ、風花があれこれと計画しだしていた。

俺たちの間には、付き合いだしたカップルが放つ特有の濃密で甘い空気が漂っているのが自分でも見えていた。

ただでさえ、風花を彼女にしたということでクラス中の関心を浴び、なおかつ、一部の男子連中からは怒りや妬みを買っていたから、俺としてはできれば教室でいちゃつくことはしたくなかった。

けれど、風花はお構いなしに俺と話したいときは話し、甘えたいときは甘えてきた。

内心では、そんな無邪気な風花が可愛くてたまらなかった。

「中学のときは、疎遠になっちゃってできなかったけどさぁ、小学校のときみたいにうちにおいでよ。うちの親も、冬弥くんに会いたがってるよ」

「両親に迷惑じゃないか?」

「全然!むしろ、家に連れて来いって言ってるよ」

「ほんと優しい両親だよなぁ」

両親にまた会いたいなと思った。
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