俺が彼女に会えない理由
梅雨が始まり雨が降ると、さくらの山公園ではなく映画デートも定番になった。

学校帰りに成田のショッピングセンターに隣接している映画館に寄って、話題になっていた邦画のサスペンス映画を風花と見に行った。

映画を観終わった後、ファーストフード店でフレンチポテトを食べながら、映画の結末がああだったのこうだったのと、お互いに感想を言い合った。

それが済むと、「実は昨日ね、お母さんと初めてケンカしちゃった」と風花が打明けて来た。

「金庫の中に保管してあったネックレスを見つけてね、付けてみたの。そしたら、お母さんが、外しなさい!ってものすごい形相で怒ってきて、強引に取り上げられちゃった。二度と触らないでって。ひどくない?」

同意を求められたが、内容の全体像がわからず黙っていた。

「だって、そのネックレス、金庫にしまってるだけで、誰も全然付けないんだよ。お母さんもお父さんも、一度だって付けてるの見たことないし。どうせ誰もしないネックレスなら、私がしたっていいじゃんって言ったんだけど。お母さんがあんなに怒るなんて初めてだったよ。なんか納得できなくて、昨日はそれっきり口きかなかった」

「風花のお母さんが怒るなんて、想像つかないな。怒ることあるんだ」

「だよね。私もびっくりだった。あ、そうそう!誕生日プレゼント、何かリクエストある?」

「いいよ。プレゼントなんて。風花が祝ってくれるなら、それだけでいい」

「もー!優しすぎ」

風花が腕をバシバシと叩いてきた。
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