俺が彼女に会えない理由
「いや、俺なんか無理だよ。夢で終わるかも」

「じゃあさ、二人でそこを目指そうぜ。競争相手がいるほうが、やる気でるだろ?」

「たしかに」

「俺もそこ目指すよ。俺の方が絶対無理だけど、頑張ってみるよ」

そう言われると不思議なもので、漠然と考えていた大学進学がクリアになった。
絶対にあの大学に入るんだと、明確な目標を掲げることができた。

そして、高校三年間、倉本は有言実行で俺のよき理解者よき競争相手になった。

試験の点数や順位を楽しんで争うことができたおかげで、成績もあがったし、勉強に対する情熱と集中力を継続させることができた。

高校三年の2月、見事に二人で合格できたときは握手して喜びあった。

それは、この後に起きた悲劇の中で、唯一、心から喜びを感じることができた瞬間だった。
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