俺が彼女に会えない理由
6月に入った。
制服が夏服に代わり、少しずつ夏の香りが感じられ始めた。

本当なら、「夏が近づいてきたねー」とはしゃぐはずの風花は、5月から始まった憂鬱さをまだ引きずっていた。

「ほんとは、お母さんの具合、ひどいんじゃないか?」と改まって真剣に聞いたが、「お母さんは、ほんとに大丈夫だから」といつもの答えだった。

「じゃあ、何があったんだよ?」

「え?なんで?」

「最近、ずっと暗い顔して、どうしたんだよ?」

「そう?気のせいだよ。ちょっと寝不足なだけ。なんでもないよ」

< 140 / 239 >

この作品をシェア

pagetop