俺が彼女に会えない理由
「わかった、勝手にしろ!」と言い捨て、俺は着替えを終えると、クローゼットの奥に手を伸ばした。

冬物の衣類をしまってある収納ボックスや、履かなくなったけれど捨てられない靴が入った箱と一緒に積み上げてある小箱を取り出した。

この12年間、決して開けることのなかった小箱。

今まで開けようと一度も思ったことさえなかったが、風花と再会して決心がつき、深呼吸してから小箱を開けた。

古い、なつかしい匂いが鼻を通り抜ける。

風花からもらった手紙と誕生日プレゼントにもらった腕時計、そしてネックレス。

結局、誰がくれたネックレスかはわからないが、高校一年のあの朝、風花がいなくなると同時に、まるで入れ違いのように現れたこのネックレスが俺にとって特別なアクセサリーであることに違いはない。

だからこそ、特別な今日、ネックレスをつけようと思い立った。

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