俺が彼女に会えない理由
ネックレスを付け、家を出る前に玄関から部屋を振り返ってみたが、風花は依然としてベッドの中で布団をかぶって丸まっている。

声をかけようかと思ったが、お互いにまだ感情がたかぶっているだろうと予想して断念し、何も言わずに静かに家を出た。

風花との残された時間が少ないのに、喧嘩をしてしまったことを悔やむ。

後味の悪さをかみつぶしながら、住吉駅から一旦、東京駅に行き、東京駅からは特急を利用する。
料金は高くつくが、各駅で行くよりずっと時間が短縮できる。

成田には、風花と俺の実家がある。

風花の家に寄った後、いつも実家に顔を出すことにしている。

毎回のことながら、成田に向かうときは胸がしめつけられる。
車窓が成田に近づくにつれ、気が張り詰めてくる。
到着する頃にはもう、完全に、高校時代に戻って悲しくなる。

何年経っても、俺にとって郷里は心安らぐ場所ではなく、大切な人を失った悲しみの場所だ。

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