俺が彼女に会えない理由
たとえ血のつながりはないにしても、この人は立派に風花の父を務めていると思う。

「風花ちゃんの命日は、何よりも大事ですから。今年は、どうしても休みがとれず、十三回忌に出席できず、すみませんでした」

「仕事が忙しいだろうし、気にしないで。三回忌や七回忌は学校の友達も大勢来てもらったから、十三回忌は、私たち夫婦だけで十分だと思っていたしね」

そう孝仁さんが言ったあと、

「あれから12年経ったなんて、信じられないわ。・・・ほんと後悔しています」

里花さんが生気のない声で今年も同じようなことをつぶやき、その声は雪が解けるように空間に溶けていった。

これほど風花に会いたくても会えない両親に対し、俺だけが風花に会っていることに申し訳なさというか罪悪感を感じ、せめて伝言を預かれないだろうかと思った。

「・・・もし、風花ちゃんに会えるとしたら、どんなことを伝えたいですか?」

孝仁さんも里花さんも、驚いた表情で俺を見る。

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