俺が彼女に会えない理由
霊が見えるなんてありえないし、俺はそういう話しは信じていない。

となれば、これは彼女に似た女性か?
彼女にそっくりな子がタチの悪いイタズラで、俺の名前を呼んだのだろう。
きっと、そうだ。

額の冷や汗を手でぬぐい、速まる鼓動を抑えながら、繰り返し自分にそう言い聞かせる。

けれど、ここまで似た人がこの世に存在するものか?しかも、彼女は高校の制服まで来てる。俺たちの、あの制服を。

そっくりさんと思うには無理がある。

「冬弥くん?どうしたの?」

彼女が俺の目の前に立って、顔を覗き込んでくる。

「驚かせちゃった?怒ってるの?ごめんね」

聞けば聞くほど、確信に変わっていく。
信じられない。その声は、やっぱり間違いない。

12年経っても耳は彼女の声をしっかり覚えていた。

死んだ彼女が隣にいる。

ありえないことが、今、目の前で起きている・・・
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