俺が彼女に会えない理由
頭は混乱しているが、彼女が隣にいることは事実だし、声もはっきりと耳に入ってくる。

まちがいなく、風花(ふうか)だ。

「私のこと、忘れちゃった・・・?」

さっきまで明るかった風花の声が、少しずつ弱々しくなっていく。

あまりの驚きで停止していた俺の体と頭はゆっくりと回復し、驚きに代わって次第にうれしさがじんわりと心に広がっていく。

「ふ、風花か?」

声がうわずってしまうあたり、まだまだ俺も度胸が足りないのか。社会に出て、いくつもの修羅場を乗り越えてきたはずなのだが。

風花の視線を受け止め、見つめ返す。まじわる視線。

「良かった、覚えててくれたんんだね。うれしい!久しぶりー!」

歓声をあげて、飛びつくように抱きついてきた。
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