俺が彼女に会えない理由
「おはよ。ご飯、できたよ」

「おはよ。今、行く」

ベッドの中からゴソゴソと起き出すと、キッチンから顔をのぞかせた風花が目に映った。

昨日、つまり、俺たちにとって最後の夜は二人で一緒にベッドで寝た。

手をつないで、布団の中で明け方までいろんな話しをして過ごした。

キスも何度もした。
でも、それ以上のことはしなかった。

風花と手をからませて布団にくるまって過ごす。
それで十分、幸せい満たされた。

キッチンに立つ風花はいつもと変わりない。

俺たち二人は長い間一緒に暮らしているみたいで、風花の微笑みは自然とこの部屋に溶け込んでいる。

朝の支度を風花が用意してくれた朝食をほおばる。

今朝の献立は、たきたてのご飯に、コーンと春雨のとろみスープ、磯辺巻き卵焼き、鮭のバター焼き、ほうれん草としいたけの胡麻和え、フルーツサラダのヨーグルトクリームのせ、とめちゃくちゃ豪華だ。

昨日、祭りに行った帰り、近所のスーパーに寄って風花に言われるがままに食材を買い込んだ。

もう二度と味わえないかもしれない風花の手料理をじっくりかみしめて食べた。
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