俺が彼女に会えない理由

朝ごはんを食べ終わったあと、「夜になるまで、どこか行きたいところはないか？何かしたいことはないか？」と尋ねると、「ただ、静かに一緒に過ごしてたい」と風花は言った。

だから、特別なことはしないで、午前中は近所の小名木川沿いの歩道を散歩したり、部屋で寝転んで過ごしたりした。

仰向けになって寝転んだ俺の胸に風花が頭をのせてきて、「この時間って、最高に贅沢」とささやいた。

目を閉じて、じっくりと贅沢な時間を味わうかのようなその表情は、安らぎと喜びに満ちていた。

今夜、消えてしまうというこんな追い詰められた状況の中で、そんなふうにできる風花を尊敬した。

そうやって、俺たちは平凡な過ごし方をしたけれど、平凡こそが俺たちにとって特別だった。

そして、平凡こそが、風花の言うように、最高に贅沢だった。