俺が彼女に会えない理由
そんな風花を背後から抱きしめた。

長い時間、そうしていた。

「もうすぐだね」

淡々とした風花の声音だったが、それがかえって逆に、燃えるような感情を押し殺しているような気がした。

俺も努めていつもの声で「もうすぐだな」と返した。

「だんだんね、体が浮遊してくるみたいな感じ。軽くなったっていうか。私、ほんとに消えちゃうみたいだね」

「延長って、できないのか?」

「レンタルショップみたいに?」クスっと笑ったあと、「それができたらいいんだけどね・・・」とため息をついた。

「やっぱ、だめか」

「うん」
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