俺が彼女に会えない理由
背後から抱きしめ、風花の首元にまわした俺の手を、風花がぎゅっと握ってきた。

「手、離さないで。ずっと、このままでいて」

「ああ、わかってる」

「最後の最後まで。私が消え始めても」

「安心しろ。離さないから」

「いつまでも、こうしてたい」

「いつまでも、こうしてよ」

「私、なんだか怖いよ。やっぱり、ずっと、冬弥くんのそばにいたい。って言ってばっかりで、ごめんね」

「謝ることないよ。俺も同じ気持ちだから」

「私、すごく幸せだったから。短い人生だったけど、冬弥くんと出会えて、幸せだったから。私を幸せにしてくれたこと、忘れないで」

「幸せにしてもらったのは、俺のほうだよ。たいしたことしてやれなくて、悪いと思ってる。もっと一緒にいろんなことしたかったよ。一緒に大学生になったり、大人になったり」

「そうだね。次の世界では、いっぱいいろんなことしよ」

「海外旅行にも、行こう。風花が行ってみたい国、どこでもいいよ」
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