俺が彼女に会えない理由
「風花に、最後に、触れたいわ。冬弥くん、私の手を風花に当ててくれる?」

里花さんの手を風花の手に添えた。

「何も感じないけど、今、私は、風花に触れているのね?」

「そうです。里花さんは、今、風花の手に触れています」

「お母さん・・・、そんなことしたら、私、泣いちゃうよ・・・」

「風花・・・」

里花さんは、風花の感触を思い出そうとするかのように、あるいはあたかも風花に触れているかのように、目を閉じてじっとそうしていた。

「お父さんにも、触れたい」

風花がそう言ったので、孝仁さんに伝え、孝仁さんの手も風花の手に当てた。

「私が消えるまで、みんなで手を重ねてよう」

そうして、俺も手を重ね、四人で重ね合わせた手を見つめながら、その時が来るのを待ち構えた。

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