俺が彼女に会えない理由
今まで、夜闇の中でたしかにいたはずの風花は、跡形もなく、いなくなってしまった。

風花と手をつないでいた自分の右手を見ると、手をつなぐ形のままだけれど、何も握りしめてはいない。

ただ、風花の冷たい手の感触が残っている。

発狂してしまいそうになり、俺は、その場に泣き崩れた。

「冬弥くん・・・」

二人が、俺の背中をさする。

「風花を生き返らせるわ」

俺は全身の力をかき集めて立ち上がった。

里花さんがネックレスを付ける。

「冬弥くん、いろいろごめんなさい・・・。次の人生でも、悔いなく生きてね」

嗚咽をあげながら、今度は孝仁さんの手を取る。

「私のせいであなたまで不幸にしてしまって、本当にごめんなさい・・・。28年前に戻ったら、素敵な人を見つけて、幸せになってね」

「今までも幸せだったよ」

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