俺が彼女に会えない理由
見たことのない知らない人だったから、そのまま無視して通り過ぎようとしたら、

「冬弥くん」と突然、声をかけられて驚いた。

なぜ自分の名前を知っているのかと、足が止まった。

顔を上げて、もう一度よくよく女の人を見てみるが、やっぱり、知らない人だった。

「冬弥くんの目は、戦国武将みたいで、強そうだよ」

いきなり、思いもしないことを言われて呆然とした。

女の人は微笑み、「ごめんね、驚かせて。でも、時間がなくて」と言った。

その微笑みに悪意はまるで感じられず、なぜかほっとするようななつかしさと安らぎがあった。

「誰なの?」

冬弥が首をかしげて尋ねると、

「小野沢里花です」と返ってきたが、その名前にもまったく覚えがない。
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