俺が彼女に会えない理由
次の瞬間、女の人が地面から浮き、つま先から透明になっていくように、ふわふわっと空に吸い込まれるように消えて行った。

冬弥は、自分の見間違いだと思って、何度も瞬きをした。

女の人は道を曲がって姿が見えなくなっただけかもしれない、そうも思った。

一体、どこの誰だったのだろう?

あの言葉は何だったのだろう?

どういう意味なんだろう?

不可解さはたくさん残ったが、悪い気はしなかった。

戦国武将と言われるのは生まれて初めてだった。

なんだか、体中からパワーが沸き上がってくるみたいに勇気づけられた。

なるほど、一重の目は戦国武将みたいなんだ。

単純な冬弥はそう鵜呑みにして、一人で上機嫌になった。

そして、戦国武将みたいに、これからは何事にも負けずに生きて行こうと思った。

その日から、戦国武将のように強くあろう、というのが冬弥の信念になった。
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