俺が彼女に会えない理由
そうっと風花の顔に近づき、その唇に自分の唇を重ねた。

「これで、黙ってくれるか?」

「もう一回」

そう要求されてもう一度キスした。

これほど幸せで、これほど苦しいキスの相手は、人生で一人しかいないだろうと思った。一人であってほしいとも思う。
これほどの感情を注ぐ相手は一人で十分だ。

「男にとって、好きな子に何もできないってのが、どれだけ辛いかわかるか?」

「わかんない」

「俺たちは同い年だ。でも、今、俺は28で風花は15、未成年の子に変なマネはできない。俺にもプライドがある。頼む、わかってくれ」

「・・・うん、わかった」

風花の声音に優しさが戻って安堵した。
そして、おやすみと気持ちを込めて、もう一度キスをした。

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