俺が彼女に会えない理由
「織田信長とか、上杉謙信とか、島津義弘とか」

「ふうん。そうかぁ」

単純ですっかり上機嫌になった俺は、大好きな武将たちの名前を聞いてますます浮かれた。

戦国武将たちの顔がどうだったのか知らないし、本当に一重だったのかもわからないが。

風花は気遣いで戦国武将にたとえてくれたに過ぎず、今なら、単なる親切心だったのだとわかるが、当時の俺は風花の言葉を鵜呑みにし、おこがましくも戦国武将になったような気分に浸った。

自分の一重の目がなんだかちょっと誇らしくなり、それが自分の特徴なのだから恥じることはないと考えが変わった。

風花の言葉によって、「言葉に救われる」という経験を初めて知った。
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