俺が彼女に会えない理由
それ以来、風花やクラスメイトたちに「戦国武将」とか「武将」と呼ばれるようになり、俺のあだ名として定着した。

俺は、堂々と顔を上げるようにもなり、性格も強くなれた。

なにかくじけそうなこととか、男子同士のケンカとか、とりわけ貧困に心が折れそうなときには決まって風花の言葉が想起し、「自分は、戦国武将のように強くなるんだ」と言い聞かせた。

貧しさと母子家庭の寂しさに耐えうることができたのも、風花の言葉のおかげだ。

その後、中学、高校、大学、社会へと生きれば生きるほど苦労や苦悩が積み重なっていき、極細の目は更に鋭くなったりもしたが、「目つきがきつい」と言われるより「意思が強そう」と肯定的に周囲に言ってもらえるのは、自分の原点に風花の言葉があって、それをいつも意識して生きていられるからだ。

戦国武将のように強くあろう、それが俺の信念だ。

つまり、風花の言葉がなかったら今の自分は存在しなかったと思う。
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