俺が彼女に会えない理由
楽しい一日になるはずだったが、余計に悲しくなった。
帰り道は、ずっと黙っていた。
口を開けば、母を罵倒してしまいそうだったからだ。

帰りのバスの中で、母はチケットをまじまじと見つめ、「ああ、ここに、会員特典って書いてあった・・・」と嘆いた。

そんなことも気づかない、そんなことも知らない、そんなことも確認しない、母の抜けたところに無性に腹が立った。

母が経済的に苦しんでいたことも、仕事で毎日疲れ切っていたことも知っている。

伴侶を失い、人生に絶望し、寂しさばかりが募ったのもわかる。

けれど、授業参観や友達の家で見てきたクラスメイトたちのお母さんが自分の母親だったらどれほど幸せだろうと思った。

大人になった今は、なんてひどい親不孝なことを思ってしまったのかと反省しているが、あのときは本気でそう思った。

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