俺が彼女に会えない理由
その晩、母が俺の名前の由来について、不意に話し始めた。

「妊娠してるってわかったらね、お父さんが、子供の名前に、弥って漢字をいれたいって言ったの。男でも女でも、自分の名前の雄弥(ゆうや)の弥がつく名前にしたいって。まさか、その翌日に事故に遭うなんてね・・・」

それは初耳だった。

「冬に生まれたってことと、弥をつけて、冬弥って決めたの。母さんはね、冬弥って名前をすごく気に入っているの。唯一、自信がもてることよ。母さんが、冬弥にしてあげられたことは、名付けることだけね・・・」

まるで独り言のようなつぶやきだった。

その日、俺は布団の中で、声を殺して泣いた。

眠りに落ちるまで、泣き続けた。

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