俺が彼女に会えない理由
母が見抜いたとおり、継父は寡黙ながらも地道にこつこつと働くまっとうな人間で、以来ずっと、母のことを大事にしてくれている。
俺に対しても、誠実に接してくれる。

継父と出会えて、母がどれほど救われたことだろう。
継父には感謝してもしきれない。

とはいえ、母と継父から離れて、早く一人暮らしをしたかった。

人口の多い東京に紛れ込んでしまいたいと本気で考え始めたのは中学二、三年の頃で、東京の大学に進学し一人暮らしをすることを目標にした。

のちに高校に入学して恋人となった風花にその目標を打ち明けると、風花も東京の大学に進学して一人暮らしをしたいと言った。

「私が行きたいのは、○○女子大学だから、同じ大学ってわけにはいかないけど、近所に住めば、しょっちゅう会えるよね」

そんな会話をしながら、そのうちくるであろう東京での大学生活を思い描いて、未知なる可能性が広がる未来に二人で心を躍らせた。
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