俺が彼女に会えない理由
「ケイドロしようよ」

「また?昨日もしたじゃん」

そんな会話もしょっちゅうした。

風花はケイドロが大好きで、いつも始めたがるのは風花だった。

二人のルールでは、じゃんけんで勝ったほうが警察役で負けたほうが泥棒役で、警察役が泥棒役を捕まえたら役を交代してへとへとになるまで遊んだ。
意外にすばしっこくて足が速い風花は、泥棒役のほうが好きなようだった。

「きゃあ、こっち来ないで~!!」

そう言いながら走りまわる風花は、教室でおとなしくしている弱々しい風花とは別人のようだった。

きっと、こうやって明るくはしゃぐ風花が本当の風花なんだろうと、なんとなくわかった。

俺たちは、夕日に照らされながら、何度も何度も警察にも泥棒にもなった。

時間を忘れて遊び続け、すっかり夜になってから帰ることもしょっちゅうだった。

そんなとき、風花のお母さんは公園に迎えにきた。

手をつないで家路につく風花とお母さんの後ろ姿が切ないくらい美しかった。
 
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