私に恋してくれますか？
今日も吉野さんへの引き継ぎも滞りなくすんだ。
吉野さんは何の問題もなく、influenceにとけこんでいる。ちょっと寂しい。


仕事が終わる時間になると、静子さんが荷物の整理にやって来て、
トオルくんの家に少しずつ増えてしまった私の荷物をトランクやダンボールに手早く詰め、
一緒に来ていた三好さんが黒塗りの車に載せ、私を待っている。

「ピーコ、もう行くのか？」とトオルくんが寂しそうな声を出すので、

「明日、片付けの手伝いに来てくれる？」と笑いかけると、

「今日、行っちゃダメ？」とそっと、髪に触る。私は明るい声で、

「きっと、静子さんや三好さんがいる。」と笑って、トオルくんの家の鍵を返すのに
付いていたお守りを外そうとすると、

「ピーコ、持ってて。いつでも来て。」とトオルくんは私を抱きしめた。私もトオルくんの背中を抱く。


「はいはい。明日ゆっくりイチャイチャして。」と桜井さんが笑い、

「雛子ちゃん、今まで、ありがとう。
ルピナスの仕事頑張って。」と左近さんが笑顔を見せた。

私は頷き、玄関を出て、車に乗り込む。

トオルくんはずっと車が見えなくなるまで見送っていた。

心がキュッと痛い。

トオルくんを置き去りにしてしまった気がした。
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