私に恋してくれますか?
私は慌てて服を着て、トオルくんを追いかける。

1階のロビーで追いついて、トオルくんの腕を掴む。

「トオルくん、私を信じて。」

トオルくんは黙って私の手を解いて、
マンションのドアを開け出て行こうとしている。

「あれー。やっぱり、俺の時計って雛子ちゃんのマンションだったか」
と足立先生が可笑しそうな顔をしてトオルくんの前に立つ。

「このヤブ!俺のピーコに手ェ出しやがって!」とトオルくんは足立先生のジャケットの胸を掴んだ。

「今すぐ、離さねーと、永遠に雛子ちゃんと別れることになるよ。」
と足立先生が怒った声で言うと、

トオルくんはハッとしてゆっくり手を離した。

ふたりは睨み合っている。
と足立先生は視線を外し、私を見る。

「雛子ちゃん、薬の続き持ってきたよ。
部屋に入れてくれる?」

「え?で、でも、」と私が慌てて、トオルくんを見ると、足立先生は笑って、

「大丈夫だよ。アホなコドモも付いてくるから、
まあ、来なかったら、雛子ちゃんはもう、俺のモノって事で…。」
と言いながら、私の腕を掴んで歩き出す。

トオルくんは怒った顔のまま、私を取り返して腕の中に入れ、エレベーターに乗り込んだ。

私達は黙って部屋に入る。

トオルくんは怒った顔のまま…
足立先生は涼しい顔のままで。



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