私に恋してくれますか?

脱走。

お見合い前日。
私は少し熱っぽくて会社をサボった。
こんな事は初めてだ。

母は心配そうに部屋を覗きに来たけれど、
私が寝たふりをしたので、
そうっと、頭を撫でて出て行った。

きっと、お見合いが嫌で、機嫌が悪いんだろうって思われたかな。
その通り。
でも、熱っぽいのは本当だ。
頭が痛いし。

静子さんが市販の風邪薬を持ってきてくれたので
それを飲んだら、午前中はぐっすり眠ってしまった。

目が醒めると、
家には家族は誰も居なかった。

静子さんが作ってくれたお粥を食べて、
柔らかい水色のモコモコのパーカーとお揃いのズボンに着替えて、
ロングコートを羽織って庭に出る。

大好きな庭。
陽射しが暖かいけど、12月は長くお散歩できないな。

そう思いながら、裏庭のシクラメンがたくさん並んだ(お正月が来たら、家に飾られる。)温室に足を向けると、
温室の前の日のよく当たる芝生に大きなグレーの猫が寝そべっていた。
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