私に恋してくれますか?
『明後日、ヨーロッパに発つ事になった。
きっと、あちこち回るだろうから、しばらく帰ってこれないと思う。
明日、成田近くのホテルに泊まるから、ピーコもおいで。』

とホテルの名前と部屋番号が書かれた勝手なラインがあった。

私の都合は?と呆れるけれど、
惚れた弱みで慌てて年休の手続きをして、
明日困らないように仕事の調整をしたり、残業して急な休みに備えた。

やれやれ。

その夜、大きめのバッグに一泊出来る支度をし、
少し考えてから、姉の部屋のドアをノックする。

姉は厚ぼったい専門書を広げてベッドに寝そべったまま、私を招き入れた。

「明日、トオルさんに会ってきます。」と言うと、

「そう、やっと会うんだ。」と笑ったので、

「明後日はヨーロッパに行くらしいです。」とため息をつくと、

姉は声をあげて笑って、

「なるほど。普通に付き合えるようになるまでには随分とかかりそうね。
呑気な雛子にピッタリのオトコじゃない。」と私の頭を撫でた。

「あの…」と私が赤くなってモジモジすると、

「ハイハイ。友達の家に行ったらしい。と言っておくわ。」と私の瞳を覗くので、

「お母様にはきちんと話して出かけます。」と言うと、

「まあ、お母様は邪魔しないでしょうから、話してから出かけなさい。」と笑って言う。

「お姉さまは足立先生と上手くいっているの?」と聞くと、

「順調、順調。
この間、会ってる時にオンナから電話があったから、
スマホ叩き壊しといたわ。」とニッコリした。

うーん。
相変わらず、お姉ちゃんと付き合う男の人は大変そうだ。

まあ、足立先生の自業自得ってこともあるだろう。

私はクスクス笑いながら、部屋を後にした。
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