私に恋してくれますか?
兄がクスクス笑い、

「嫁に出しても、すぐ近くに住むなんて、いい話だねえ。親父。
もう、いいだろ。ここで反対したら、
雛子はトオルと海外に住むって言い出すかもよ。」と父の顔を見る。

父はムウううッと声を出し、

「雛子、本当にこの男じゃないとダメか?」と私の顔を見るので、

私が頷くと、

「…いつでも、帰って来なさい。」と大きなため息をついて家に向かっていった。


兄と、ヒロミさんが肩をすくめて、後に続いて戻っていく。

「上手くいったねえ。
ヒロミさんのトオルにあの家を相続させて新居にするっていうアイデアは
親父の心を動かしたな。
これで、五十嵐の家と血縁関係が出来たね。
後付けの政略結婚。ビジネスにもきっとプラスだ。」と兄がニッコリ笑って振り返る。

そうか、兄達の計画に私達は乗せれれたって事かな?

「まあ、お義父さんは
お義母さんによく似た雛子さんを手元に置きたいはずだって…。
少し話をしてればわかるよねえ。
俺との事も、俺が養子にはいるっていうのが
ポイントだって俺は気づいてたし…。
トオル、ひとつ『かし』だぞ。」とヒロミさんが顔をしかめてトオルくんを振り返る。

「女の子紹介する?」とトオルくんが聞いて、

「皐月にまたスマホ壊されるから、いらねーよ。」とさらに顔をしかめてから笑った。


「面倒な弟ができそうだな。」とヒロミさんは兄の顔を見る。

「仲良しじゃん。」

「冗談はよせ。」と笑い声が遠ざかった。
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