私に恋してくれますか?
私の部屋でトオルくんは用意されていたフォーマルスーツに着替える。

兄がスグル君に頼んでトオルくんのサイズで作られているものらしい。

きっと役に立つ日が来る。って用意している兄はやっぱり出来るオトコだ。


着替えて控え室にいる母と姉に挨拶に行く。

「トオルさん、いらっしゃい。」と母が笑い、

「やっと、会えたわね。」と姉は白い美しいクラシカルなワンピースを身につけ、

フワリとしたベールを被っている。とても綺麗だ。

「お姉様とても綺麗ね。」と私が笑うと、

「しばらく日本にいるらしいじゃない。
近所に住むらしいし…。夫婦喧嘩した時には寄らせてもらうわ。」と姉が笑ったので、

「いつでもどうぞ。」とトオルくんが笑うと、

「私じゃないわよ。ヒロミがお邪魔すると思うわ。」と微笑み、

トオルくんが「げー。」と下を向いて呟くのをおかしそうに見つめる。


「雛子をよろしくね。」と母が言ってトオルくんが

「ふつつか者ですがよろしくお願いします。」と深く頭を下げた。

それってお嫁に行く時、私がトオルくんのご両親に言うセリフだろうか?と思いつつ、
近所に住むから、お世話になりますって事かな
と思いながらクスクス笑った。

「トオルさんにも」と母がトオルくんにビロードの小さな箱を渡す。

ルピナスの飾りがついたプラチナでできたタイピンとカフスだ。

トオルくんは嬉しそうに身につけてパーティーに出席するみたいだ。

家族の印。

これから私とトオルくんは家族になる。



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