私に恋してくれますか?
父は老舗洋菓子店「ルピナス」の2代目。
神奈川県と東京を中心に展開される洋菓子店と、
百貨店に販売店とティールームをいくつも経営していて忙しく、
(優秀な兄がその後を継ぐ予定だ。)
子供達の顔を見るため、必ず、朝食を一緒にとるようにしている。

「サツキ、仕事はどうだ?」とまずは姉に聞く。
「モデルの仕事?研究?」と姉が聞くと、
「モデルはそのうち辞めると言ってただろ。
その、なんだ、カビの研究だったか?」と姉を見る。
「乳酸菌の研究。です。いつも通りです。特に成果はない。」
と機嫌の悪い声を出す。
美しく、スタイルのいい姉は女性雑誌のモデルをしながら、
リケジョとして、大手企業の研究職についている。
「そうか。」と父は言葉を切って、私に向き直る。
「ヒナコ、体の具合はどうだ。」
「体調は良いです。」と微笑んでおくと、
「そうか。」と微笑み、
後は兄と仕事の打ち合わせを熱心に始める。

いつもの光景。
父は姉がどんな研究をしているのか、ちっとも理解をしていないし、
私の事は子供の頃心臓の手術をしているのを気にして、いまだに聞いてくる。
うーん。なんかズレてる。

それでも、家族の事を父なりに愛しているってそう思う。
朝の儀式。
姉のサツキが無駄と呼ぶこの時間が私は結構好きだ。

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