私に恋してくれますか?
食事の後、お風呂の掃除の仕方を教わり、湯船にお湯を張って、
順番にお風呂に入った。
すごく疲れた。
ゆっくり、湯船の中で手足を伸ばして、天井を見上げる。
勢いで家出なんてしてしまって、
きっと両親は心配しているだろう。
でも、
私にとっては、普通に生活を知る大きなチャンスだ。
トオルくんは軽そうだけど、優しい。
私が世間知らずでも
笑って許してくれている。

甘えさせてもらっているから、
明日から、ここの電話番(と言われていた。)を頑張ろう。
事務仕事はルピナスでしていたから
なんとかできるかもしれない。

そう思って、
お風呂から上がって、貸してもらったダボダボのトレーナーと
裾を折り曲げたジャージを身につけた。

「お先にお風呂使わせていただきました。」と頭を下げると、

「そのジャージ姿って、案外良いね。
ダボダボ具合がそそる。」と目を細めて私と、すれ違って浴室に向かい、

「俺の抑制ってあんまり効かないから、
俺が風呂から上がる前に部屋にひきあげて、内鍵をかけておいて。」とトオルくんはクスクス笑った。

私は真っ赤になりながら、

階段をかけ上がる。

さっきの優しいって思ったのは撤回だ。

できるだけ早く出ていかなければ…。

子供の頃の口の悪いトオルくんしか知らないけど、

大人になったトオルくんは
女の子に手が早いってメガネの桜井さんが言っていたかもしれない…。
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