私に恋してくれますか?
事務所に降りると、
「おはよう。」と左近さんと、桜井さんが声をかけてくれる。
「おはようございます。」と言いながら、キッチンに立つ。
マグカップを用意し、カップを温める。
コーヒーはペーパーフィルターで淹れ、
トレイで砂糖とミルクと一緒に運び、それぞれの事務机に運ぶ。
左近さんはミルクを2個とり、
桜井さんは砂糖と、ミルクをひとつずつ取った。
トオル君はブラック。そっと覚えておく。
お茶汲みの基本だ。

「サンキュ。」と言うけど、トオル君はパソコンの画面を見たままだ。
電話のベルが鳴る。
「出て。」とトオル君が画面から目を離さずにいう。
…ここって?
私が受話器を上げる前に手を止めると、

「インフルエンス。」と左近さんが笑った。

「お待たせしました。インフルエンスでございます。」と電話にでると

…!!早口の英語!

『もう一度ゆっくりお願いします。』となんとか英語で答える。

よかった。聞き取れる。

少しアクセントが気になるけど、大丈夫そうだ。

高校の3年間は父の方針で私達兄弟はイギリスに留学していた。
兄と姉は寮で生活をしたけど、
父が私の身体を心配したのと、引っ込み思案で周りと馴染めないと思ったみたいで、
私は少し郊外に家を借りて静江さんと、ご主人の三好さん(父の運転手さん)が一緒に生活してくれ、
生活をサポートしてもらっていた。
まあ、姉は大学もイギリスの大学に行く事にしたので、
ちょくちょく顔を出して静江さんの料理を食べに来ていたけれど…






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