私に恋してくれますか？

約束の時間に駅に行くと、静子さんが薄いサングラスをかけて、帽子を被って待っていた。
誰かに見つからないように何かの変装かな？と少し、笑顔になる。

静子さんは私の姿を見つけて、駆け寄ってくる。
「雛子さん！」と言って抱きしめられ
「怪我はありませんか？」と私の顔を見つめた。
「怪我なんてありません。ただの家出ですから…」と私がにっこりすると、
大きく息をついて再び抱きしめた。

「お母様は？」と聞くと、
「大丈夫です。
皐月さんがお友達のところにいるって話してくれたので、安心されたようです。
今日は旦那様が付き添っています。
お食事も召し上がられましたし…。
でも、雛子さん、
急に男の方と出て行かれるなんて、
本当に驚きました。」と呆れた声を出した。

…実は私もびっくりなんだけど
その辺りはあまり追求して欲しくない。

私は話を変えることにする。
「静子さんたら、その格好…」と私がクスクス笑うと、
「笑い事じゃありません！
三好（静子さんのご主人。）の目を盗んでスーツケースを持ち出すのは大変でした。
皐月さんが三好に仕事先まで迎えに来て欲しいって言って迎えに出かけなければ
家を出て来られませんでした。」とため息をついた。

「ごめんなさい。」と私は神妙な顔で頭を下げると、
「荷物はタクシーに乗せてあります。
雛子さんがお世話になっているお家にご挨拶に行きます。」と私の顔を見た。

えええ？！