私に恋してくれますか?
相手のお宅に迷惑になるから、
と言っても静子さんは一歩も譲らない。
「ご挨拶に行けないのなら、このまま荷物を持って帰ります。
奥様にも安心していただくためにも、私がこの目でお相手の方を確認出来るまで荷物は渡しません。」と
口元を引き締めている。

やれやれ。

やっぱり
さっきトオル君が言ってくれた通り
恋人の家って言った方がいいかな。
恋人でもない男の人の家にお世話になってるって言ったら、
非常識だとか、はしたないとか
…静子さんなら言いそうだ。
そんな家出は、母も許さないだろう。

私は諦めて、
「ここのロータリーの裏です。」と渋々案内することにした。


スーツケース2個だったから、タクシーは使わず、
ひとつずつ、大きなスーツケースをガラガラと押して運ぶ。
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