私に恋してくれますか?
帰り道。
2人が駅に向かったあと、
「私達も帰りましょう」と言うと、
トオル君は私の目の前に手をヒラヒラと差し出した。

手をひけってこと?
私は少し、躊躇してからトオル君の手を握って歩き出す。

少し酔ったトオル君はおとなしく手を引かれて
時折立ち止まったりしながらついて来る。

大きな暖かい手。

始めて自分から握った男の人の手だ。
これなら手袋いらないかなって思いながら、
コートの襟を合わせ直して、ブルリと肩を震わせる。

数分歩くと、家がみえてきた。

「ピーコ寒い?」とトオル君は私の顔をぼんやり見る。
「もう、家です。」と笑いかけると、

トオル君は急に私を引き寄せ、
コートの中に引っ張り入れ、ギュウウっと抱きしめる。

うわあ
何するの?

「…ピーコ。あったかい?」とトオル君は私の顔を覗き、
酔った息を吐いて、ニカッと笑う。

顔が近すぎる!
あったかいっていうより、心臓がバクバクいって苦しい!

「は、離してください。」と腕を解くと、

「ピーコ、顔が赤くなったね。あったまった?」と無邪気な顔でニコニコする。

酔っ払い!
次は抱きしめられないように気をつけないと…
私の心臓がどうにかなるかもしれない。

いくら、私の心臓は治っているって言っても、
こんなに激しく動いたのでは、びっくりでしょ!


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