私に恋してくれますか?
1月末。病院受診当日。
私はここの仕事で着ることがなかった
仕立ての良い花柄のワンピースとネイビーのジャケットを羽織り、
ブルーの薄いロングのダウンコートに
同じ色の靴とバッグを合わせて、1階に降りると、

「ピーコ、デートか?化粧が濃い。」とトオル君が不機嫌な顔をする。
「…病院です。濃くありません。
いつもはほとんどお化粧していないだけし、
外に出ないのでパンツスタイルだっただけです。」と言うと、

「へえ。雛子ちゃん、ワンピースたまに着てよ。よく似合う。」と桜井さんが笑う。
「桜井、ミクに言いつけるぞ。
ピーコ、主治医って男?」と顔をしかめる。

「男です。教授が担当ですが、男だったら何ですか?」と聞くと、

「雛子ちゃんの初めての1人で外出?ってヤツ?
トオル、そのヤキモチをなんとかしないと、雛子ちゃんにもにげられるぞ。」と左近さんが怒った顔をする。

「トオルは干渉しすぎて、いつもオンナノコに逃げられる。
今までの彼女はトオル以外の男と遊びにいったり、
グループで飲みに行ったりしたい子だったから、
トオルはすぐに嫌われた。
まあ、飲み屋で出会う女の子達は、
たいてい外に出て、遊びたいって思う子が多いでしょう?
雛子ちゃんはそういうタイプじゃないから
そんなに心配するなよ。」と左近さんが笑った。

トオル君は不機嫌そうに黙り込む。

いや、私はトオル君と付き合ってませんけど…。

検査の予約の時間に遅れる…

「…時間なので…行ってきます。」と私は小さく言って玄関を慌てて飛び出した。

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