私に恋してくれますか?
「やれやれ。
コーヒーは飲まない方がいいよ。」
とぼんやりしていた私の前に足立先生が座って、
湯気の出ているホットミルクと内視鏡の予約表と内服薬を置いた。

「困ったお嬢さんだな。
僕は君のお母さんに嘘をついちゃったよ。」と笑いかけるので、

「先生は心臓のことしか言っていないので、嘘をついてはいません。」と私が涙を拭くと、


「気がついてたね。まあ、いいよ。胃の具合は直ぐに治してあげるから。
ちゃんと薬飲んでね」と呆れた声で言った。


「ありがとうございます。」とホットミルクに口をつけ
「美味しい。」と笑いかけると、

「お嬢さん、呑気だけど、大丈夫?
雪。かなり降ってるけど…」

私が驚いて窓の外を見ると、
シンシンと雪が降っている。

「どおりで寒いと思ってました。」と言うと、

「あのさあ、電車、止まってるけど。どうやって帰るの?」と言うので、

周りを見回すと、
カフェには私たちだけだ。

「えっ!?」と立ち上がる。


「この様子じゃあ、運転手さんは来ないの?
家を出てるって家出?」と聞かれ、私が呆然とした顔で頷くと、

「本当に呆れた人だな。
俺も勤務は終わったから。送ってくよ。
会計で病院の支払いは検査の時にするって言っといたから
それ飲んでここで待ってて。」とクスクス笑いながらカフェを出て行った。
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