私に恋してくれますか?
スーツに着替えた足立先生が迎えに来て、車の助手席に収まった。
よく見る高級車。
広くて乗り心地がいい。

なんでこんなことになってるだろう。

「後ろの座席がよかった?
男の運転する車には乗ったことがない?」と足立先生は機嫌の良い声で私をからかう。

「男の人の運転する助手席に座ったことはあります。」とトオル君の小さな車を考える。

「家出先って?男のところ?なんで家出したの?」と興味シンシンだ。

「先生には話す必要がないって思いますけど…。」と横を向くと、

「僕には嘘をつかない方がいいと思うけど
…お母さんに胃カメラの日付教えておく?」とクスクス笑う。

「…お見合いが嫌で、知り合いのお家においてもらっています。」

「なるほどー。じゃあ、恋人じゃない男の家だ。」と嬉しそうに言うので、

「…母には言わないでください。」と言うと、

「当たりだ。そんなとこって危なくない?」と顔をしかめるので、

「周りにも、そう言われるって思ったので、
…恋人のところだと言っています。
その人はルームシェアと思っていますし、
そのうちそのお家を出て、
1人暮らしをしたいって思っています。」と言うと、

「へー。なんで?」

「きちんとオトナになって、普通の生活をしたいから。」

「お嬢さんの割に結構真面目なんだね。
資産家の娘で派手じゃないって珍しいね。
僕も、結婚相手に名乗りをあげようかな。」と足立先生はクスクス笑った。

「ふざけないでください。」

「いや、結構本気。」と真面目な声を出しので、私は黙り込む。

車は雪の中でもスムーズに走っていく。




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