私に恋してくれますか?
検査は20分もかからず終わったけど、カメラを飲み込むのが苦しくて、涙が出た。
足立先生は私の後ろでそっと背中を撫でながら、モニターを確認していた様子だ。
「先生、優しい。」と介助のナースが言って、
「雛子ちゃんは特別。
彼女が心臓の手術の後、ちゃんとオトナになってくれて嬉しいし、
…もう、口説いてもいい年だっておもうんだよね。」と返事をしている。

心臓外科の先生には感謝してるけど…
口説かなくっていいと思います。

と思ったけど、検査中は苦しくって何度も深呼吸をしていただけだった。

足立先生は検査のあと
「ちょっと胃が荒れてるけど大丈夫そうだね。」
と着替え終わってため息をつく私の顔を見た。

また、胃薬出しておくから、と
「会計すんだらちょっと待ってて。」と売店の前のベンチを指差した。

「…はい。」と大人しく座って待つ。(処方箋もらってないし。)

すると、スーツに着替えた足立先生が足早にやって来た。

「先生、仕事は?」と聞くと、
「終わった。当直だったから。」と私の瞳を覗く。


わざわざ私の検査のために残ってたの?
もう、お昼は過ぎてるけど…。


「…処方箋をください」と手を出して言うと、
「もう、院内で薬もらった。この間もそうしたでしょ。」
と足立先生は楽しそうに言って、私の手を握って歩き出した。

私は呆れて先生に手を引かれて歩く。
先生は時折周りに挨拶しながら、病院を後にした。
< 66 / 191 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop