私に恋してくれますか?
足立先生は私をまた助手席に座らせ、機嫌の良い顔で車を走らせる。

「…送ってもらわないようにって言われて来たんですが…」と私が俯くと、
「えーと、ルームシェアの相手の五十嵐くん?」と笑った声を出す。

「今日は雪も降っていませんし、ひとりで帰れます。」と言うと、

「おなか空いたでしょ。朝、抜いたから、俺も、腹減ったし…昼メシくらい付き合ってよ。」とクスクス笑う。

「…先生、困ります。」と言っても、

「うどんと、お粥どっちがいい?」
と信号で止まった時に私の顔を覗いて、何度も同じ質問を繰り返す。

「このまま、ドライブかな。」と、先生はつぶやく。
しばらく走ると、高速道路の表示が見えてきた。

もうすぐ高速の入り口。
都内に行ってしまいそうだ。

「うどん?お粥?」とニコニコする。

「…お粥。」と諦めた声を出すと、

「俺の勝ち。中華街でいいかな。」と声を出して笑って、ハンドルを切った。

やれやれ。

まあ、中華街なら知らない場所って訳じゃないし…。


中華街近くのパーキングに停め、足立先生は私の手を引いて歩き出した。

「先生、手を離してください。」と言うと、
「イ・ヤ。逃げられそうだから」とクスクス笑う。

困った人だ。

オトナのくせに。

私はくすんと笑ってしまう。

「雛子ちゃん、笑ったね」と気付かれてしまう。
「先生、強引すぎです。」と顔をしかめると、

「わかってるよ」と嬉しそうに微笑んだ。

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