私に恋してくれますか?
中華街の真ん中にある有名店に入る。

先生は個室を選んで2人きりで丸いテーブルに向き合って座った。

私はホタテのお粥と鶏肉の蒸したものを選び、

足立先生は麻婆豆腐とフカヒレのスープとライスを選んだ。


「足立 広海、35歳。独身。心臓外科医。です。
なんか知りたい事ある?」と私の顔を覗く。

「先生は患者さんにいつもこんな風に『親切』なんですか?」と機嫌の悪い顔で聞くと、

「まさか、こんな事をどの患者さんにもする訳ないでしょ。
雛子ちゃんは特別、ってさっきも言ったよね。」とくすんと笑ってみせる。

「僕は普通のサラリーマンの家庭で育った。
45歳くらいで開業したいって思ってて、まあ、開業にはすごくお金がかかる。
だからね、資産家のお嬢さんとの結婚は、都合がいいんだ。
開業する時、資金援助してもらえそうだし、
開業後に頑張って稼がなくても、いい気がするし。
雛子ちゃん、僕は結婚相手に悪くないって思うよ。
高学歴、高収入。結構仕事が好き。
ルックスも悪くない。
それに君の健康管理も出来る。養子に入ってもいい。」と私の顔を見た。

私は怒った顔で、足立先生を見てから、お粥に手を付けた。

先生は微笑んだままで、スープを取り分け、テーブルを回して私の前で止める。

「…ありがとうございます。」と呟くと、

「やっぱり、雛子さんは育ちがいいな。
怒っていても、ありがとうってちゃんと言える。」とふふっと笑って足立先生は食事を始めた。

フカヒレのスープと鶏肉の蒸し物は分け合って食べ、

「デザートどう?杏仁豆腐頼むよ。
僕はけっこう、甘いものも食べるんだ。
ルピナスのケーキも好きだよ。」とニッコリした。

私が頷くと、店員さんを呼んで、注文をした。
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