私に恋してくれますか?
杏仁豆腐とジャスミン茶が運ばれてきて、

またすぐに「失礼します。」と声がする。

私はハッとして、足立先生の顔を見る。

父の秘書の水城さんの声だ。

「雛子ちゃん、黙っていてごめんね。でも、お父さんと、少し話をしてほしい。」と微笑んだ。

私が立ち上がる前に、水城さんと、父が部屋に入って来た。


「雛子元気だったか?足立くんから少し胃が悪いと聞いていたが…」と父は静かな声で聞いた。

「…ご無沙汰しています。胃の調子は足立先生のおかげで、良くなってきています。」と父を見上げると、

父は立ったままで、声が大きくなりそうになるのを抑えながら、

「家に帰る気は無いのか?
雛子、きちんと考えろ。
挨拶もなく、おまえを連れ出す男を私は認めるわけにはいかないし、
今の生活で、雛子は身体を壊しているんじゃ無いのか?
雛子の体の事を分かっていない五十嵐透という男に
雛子の一生を任せるわけにはいかない。
…家に戻りなさい。
直ぐに見合いをしろとは言わない。
足立くんは雛子と結婚したいと言っているし、
少し、付き合ってみればいい。
足立くんなら…雛子を任せられる。」

…トオルくんの事を、もう知っている…と私は顔をしかめる。

「五十嵐さんは、お見合いを嫌がっていた私を連れ出してくれました。
私にお父様の言いなりにならず、向き合う勇気をくれた人です。
私が心臓の手術をしていることも、
普通の生活が出来ていない事も知っていて、
一緒にいてくれています。
私の体の事は自分で管理します。
家に帰るつもりはありません。」

私と父は静かに睨み合う。



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