私に恋してくれますか?
その夜、トオルくんは珍しく酔っ払ってソファーで眠ってしまった。

「最近、トオルは少し、疲れてるかな。
雛子ちゃんが落ち着いて、トオルのそばにいないからじゃない?
最近、男と出かけてるでしょ。アイツって元カレかなんか?」
と左近さんが隣で、洗い物をしながら私の顔を見る。

サオリさんと、ミクちゃんも片付けの手を止め、私の言葉を待つ。

やっぱり、わかるよね。と思って
私はちょっと息をついて

「…父のお気に入りで、家出をした私と父の関係を修復してくれようとしてくれています。
お付き合いをしていると言うわけではありません。」とため息をつくと、

「それだけには思えないけど?」と桜井さんも口を出す。

「…私と…結婚を前提としたお付き合いを望んでいます。」と小さな声で言うと、

「うわあ、それって政略結婚?ってやつ?」
とミクちゃんが声を出して、サオリさんにたしなめられる。

「…雛子ちゃんってそんなにお嬢さんだったんだ…。」と桜井さんは驚いた顔を見せる。

「まあ、雛子ちゃんって、話し方とかちゃんとしてるし、教養もありそうだし…出かける時の服とか持ち物とか高級品だから…そうかなって思ってたけどね。
トオルも雛子ちゃんの家のことは俺たちに話さなかったし…、
トオルも実家は金持ちらしいよ。
家を出てるから、
そんなそぶりは俺たちには見せないけど…。
この家も、おばあちゃんが用意してくれたみたいだし…。」
と左近さんは少し考えるように話した。

「ああ、だから、時々ばーちゃんに呼び出されたって、出かけてるのか…」
と桜井さんも納得したような声を出した。

みんなはそれぞれ、ううーん。と考えている。



私はちっともトオル君のことを知らない。

トオルくんの家族の話は一度も聞いていなかったかもしれない…。

そう思った。




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